内海初優勝に横井初戴冠!のむけんラストランと盛りだくさんだった2018D1GP最終戦

11月3日(土)、お台場・特設会場にて2018D1グランプリ最終戦が行われ、5年ぶりに決勝進出した内海彰乃(DIXCEL TOYO TIRES)見事初優勝!

またシリーズチャンピオンには横井昌志(D-MAX)が初めてその王座を戴冠。嬉しい自身初のシリーズチャンピオンに輝いた。

横井優位で迎えた最終戦

3月31日に大阪・舞洲で開幕し、4年ぶりのオートポリス、そして初の北海道上陸とD1史上もっとも長距離移動となった2018年シーズン。振り返ると、筑波戦以外、横井はつねに表彰台に立ち上がる好調さをみせつけ、気づけば「単走3位で入ればチャンピオン決定」という状況にあった。

いっぽう、もう1人のチャンピオン有力候補は川畑真人(TOYO TIRES GLION TRUST RACING)。前戦のエビスで2018単走王を決めているものの、追走トーナメントでは、マシントラブルや自身のミスにより勝ち星を挙げるに至ってはおらず、チームメイトの末永正雄の不調もあり、気づけばチーム自身も未だ1勝も挙げていない状況で最終戦を迎えていた。川畑は例えチャンピオンが獲得できなくても、末永正雄は自らの存在感を示す上でも、ここで勝利し来年へとつなげたいところである。

また、最終戦でD1から引退する選手やチームの姿も。D1黎明期から18年間走り続けてきた野村建にとって、このお台場が最後のレース。会場では「ありがとう」と書かれた黄色い小旗が配られ、開場前から「のむけんラストラン」の演出がなされた。

また16年に渡り活躍した「広島トヨタ Team DRoo-P」もこのお台場が最後の舞台。パンダカラーのAE85とGT86の姿もここで見納めとなった。なおドライバーの松川和也と林 和樹はフォーミュラー・ドリフトへと戦いの舞台を移し、チームは来年からスーパー耐久のST4クラスでの参戦を予定しているという。

3位以内で横井チャンピオン決定

予選は行われず、いきなり単走決勝となった今回のお台場最終戦。練習走行が行われた午前中は汗ばむほどの秋晴れだったのだが、単走決勝が始まる頃は雲がたちこめ路面温度が急変。この路面状況に各選手が苦しんだ。

まずは野村がトップバッターで飛び出していく。スピードはないものの白煙番長の名は未だ健在だ。 その後、各選手が飛び出していくものの、低い路面温度に対応できずフロントグリップが逃げてしまうクルマが続出。その中には、お台場がラストランとなるDRoo-Pの2台の姿もあった。

その中で気を吐いたのが時田雅義。近年は単走決勝に進出できずピットレポートなどが多かった彼であるが、丁寧な走りで96.53を叩き出して決勝トーナメントへと進んだ。

さて、序盤で高得点を出したのがその中で高得点を出したのは田中省己(SEIMI STYLE DRIFT TOYO TIRES)。ベテランらしいまとめ方をみせて98.55を叩き出し、暫定トップに躍り出る。

その後、末永正雄も久々の快走で98.49と暫定2位に入り、単走で強さを見せる松井有紀夫(Team RE雨宮 K&N)はロータリーサウンドの快音を響かせるも98.11止まり。

残るはトップ3の3選手。まずは末永直登(Team ORANGE)が、金曜日の練習走行中、左手を負傷するトラブルに見舞われながらもダイナミックな走りを魅せて98.61を獲得。兄貴の威厳を弟に見せつけるとともに、トップに躍り出る。

続く単走王の川畑は今年を締めくくるダイナミックな走りで99点台。しかしインカットしたため、2点減点され97.23と8番手。ギリギリ1本目通過を果たした。

残るは横井昌志。ここで98.49を超えれば、3位に入りチャンピオン確定となるところ、なんと安全マージンたっぷりの走りで点数が伸びず98.31と4番手。ここで末永直登の単相優勝が決まった。

勝利した末永は「翌日のFIA-IDCとD1のコースが似ていて混乱するね。しかも練習走行も少ないし。手首も昨日ケガをしてしまったけれど、何とか走り切ることができました」と安堵の表情を浮かべていた。

波乱の最終戦を制したのはベテラン内海

午後に行われた追走トーナメントは、末永直登が勝った瞬間に横井の優勝が決まるという第一試合から始まった。相手は内海彰乃(DIXCEL TOYO TIRES)。過去の対戦成績から見ても末永有利に見えた。しかし末永がまさかのミス! なんと敗退してしまい、横井のチャンピオン獲得は一旦お預け。

続くは川畑と若手・小橋正典(Team ORAGE)の戦い。小橋は今年前半こそ「コワシ」と言われるほどマシントラブルに泣かされたものの、第6戦のエビスで自身初勝利を飾るなど、確実な成長を遂げており、川畑としても気の抜けない相手。川畑先行の1本目は、マシンの圧倒的な差をみせつけて大きく引き離す。

そして川畑後追いの2本目。1コーナーを過ぎたあたりで、駆動系にトラブル発生し無念のリタイア。これで横井の2018年チャンピオンが決まった。

その横井は「優勝してチャンピオン獲得の餞にしたい」との思いから、時田、松井を倒し準決勝に勝ち進む。

しかし、まさかの内海に対して後追いの2セクターでミスをし敗退。北岡裕輔(TEAM MORI パーツオフ)との3位決定戦で貫禄をみせつけて勝利。辛くも表彰台に登壇した。

決勝は内海対末永(正)。今シーズン1勝もしていないTOYO TIRES GLION TRUST RACINGとしては、何が何でも勝ってシーズンを締めくくりたいところだ。その対戦は長時間にわたる判定の結果、内海に軍配。見事、自身初勝利の栄光を掴んだ。

勝った内海は、優勝の実感がない様子ながらも「追走はタイヤの熱入れを十分に行ったことが上手くいったのかと思います。何より優勝したことより、自分が思いっきり走りきれたというのが嬉しいです。今まで何度か決勝戦に勝ち進んだけれど、全部マシンが潰れて勝負にならなかった。今回も潰れているのですけれど、その部分を把握したのが良かったかと思う」と自己分析をした。

チャンピオンとなった横井は、「ほぼ決定という流れはあったのですが、自分で勝って終わりたいという意思があった。川畑さんのマシントラブルでホッとした。内海さんの後ろで、自爆という形で終わったのが悔しくて、3位決定戦は気を取り直して、自分の中でできることはできた」と淡々とした表情。そして「優勝はなくてもシリーズは撮りたいと思っていた。新しくマシンを作ったら、その年が一番いい。今年取らなければ次はないとシーズンの始まる前から思っていた。特に心がけたのは単走で、上位で取らないと追走が通らないほど、タイヤに余裕がなかった。だから筑波を除く全戦1本目で勝ち上がることができたのがチャンピオンにつながったのだと思う。北海道での川畑戦で、負けると思っていたが、あそこで勝てた。そこが一つの節目だと思う」と2018年シーズンを振り返った。

シーズン2位で終わった川畑は「今年は車のトラブルと自分のミスでの負けがあった。車のトラブルは機械なので仕方ないとしても自分のミスは今でも残ります。後悔しても仕方ないけれど、自分のツメの甘さが出たと思う。2位にいれたことも、失敗の量から考えてもよかったかなと思うほど、内容的によくはなかった。2位になれたのは、単走1位でのポイントによるもので、追走での走りが最低だったと思う。今年の横井選手は強いなという印象だった。今年は負けた印象しかない。自分のミスで負けたイメージしかない」と、時折下唇を噛み締めながら、悔しさを隠さなかった。

のむけんらしいラストラン

追走トーナメント終了後、野村の引退セレモニーが行われた。会場には支配人の愛称で親しまれるTeam ORANAGE代表の熊久保が登場。野村との追走を行うとのアナウンスに会場は一気にヒートアップ。

まずは野村の単走。夜間照明に照らされたタイヤスモークが立ち上がり白煙番長のラストランに、スタンドからは小さな小旗が舞い踊る。

しかし、途中で駆動系にトラブルが発生しマシンストップ。あまりのことに静まり返る会場。野村も車から降りるや、がっくりと地面に膝をつけて茫然自失。

そこにやってきたのは熊久保。野村は熊久保のマシンに乗り込むと、身を乗り出してスタンドに手を振った。その後、熊久保はそれぞれのスタンドの前でドーナツターン。会場が白い煙で包まれる中、白煙番長の引退セレモニーは静かに幕を閉じた。