最初から最後まで波乱続き!D1GP「EBISU DRIFT」レポート

文・写真:栗原彰光

2018D1グランプリシリーズもいよいよ大詰め! 第6戦と第7戦が聖地・エビスサーキットで行われ、川畑真人がシーズン終了を待たずして単走王者に。

そして横井昌志が自身初のシリーズチャンピオン載冠に王手をかけた。

 

自ら「神の領域」にいると豪語する川畑が第6戦・単走を決める

曇天模様で朝を迎えた第6戦の舞台エビスサーキット。しかし時折強い日差しが照りつける蒸し暑いコンディションの中で朝10時から単走決勝が行われた。

単走決勝で最初に高得点を叩き出したのはチャールズ・エン(Team TOYO TIRES DRIFT Do-Luck)。ダイナミックな切り返しを披露し97.98をマークする。
その後、内海彰乃、上野高広といったベテランが、次々に高得点を叩き出しスコアボードを塗り替えていくが、エビスを得意とし、昨年のエビス戦で単走優勝を飾った松井有紀夫(Team RE雨宮 K&M)が、117.9km/hと他を圧倒する速度で99.46をマーク。これで勝負あったかに見えた。

しかし、ここでシーズン単走5勝目を狙う川畑真人が名物のジャンプドリフトのある第一セクターから思い切りよく飛び出し、そのまま2セクターへ侵入。ダイナミックで鋭い切り返しのドリフトで99.66を叩き出し勝負を決めた。

雨のよる混乱の中、小橋正典がD1初優勝!

8月25日12時から開始した追走トーナメントは、好天だった午前中とは一転、雨が降ったり止んだりという気まぐれの天気の中で行われた。路面はダンプ状態で大変滑りやすく、ゼブラゾーンにタイヤを乗せると、あっという間にスピン。まるで氷上でドリフトするような状況であった。

まず最初に餌食になったのは藤野。ベスト16戦で対戦相手の北岡が藤野をプッシュ! 北岡はフロントバンパーを破損する程度で復帰したが、当てられた藤野はドライブシャフトにダメージを負いリタイアに終わる。

次の餌食は高橋。先行する内海が縁石の乗ってスピン。それに引きづられて高橋もスピンした際、リアにダメージを追ってしまい走るのがやっと。内海のペナルティにより勝ち進むも、ベスト8戦で横井の前に敗退した。

このスリッピーな路面はベテラン勢にも牙をむいた。まず上野が対小橋戦の先行時にスピン。幸いにも両者のマシンにダメージはなかった。

続いて松井。対チャールズ戦において松井が後追い時にジャンプドリフトをした際に姿勢を乱し、2セクターでドリフトをすることができず。これがペナルティとなり、まさかの敗退。

ベスト8戦では、川畑の左フロントタイヤにめがけて北岡ミサイルが炸裂。その影響なのか、後追い時に川畑が1セクターでスピンして北岡が勝ち進む。

しかし、北岡は準決勝の対横井戦で、2セクターでドリフトが外に膨らみ車体後部を大きく破損。無念のリタイアを期してしまう。

準決勝のもう1試合、末永正雄と小橋によるTeamORANGE同門対決は、小橋が第3セクターの水たまりにのってスピン。

これにより末永の決勝進出が決まったかに思えたのだが、末永の後追い時に第1セクター前でリム落ち。今年から適応されたルール「リム落ちした場合は失格。その日のポイントの剥奪とリム落ち後の走行不可」に基づき、末永はここで終わってしまった。

3位決定戦は北岡は走行不能、末永は走行不可のため、単走の順位が適用され末永が入賞した。

決勝戦はまさかの展開に!

決勝は小橋対横井。横井後追いの2本目、前走する小橋に対してビタビタに詰めていく。そして第4セクターでオーバーテイクするかに見えたが、この際、小橋の左前にヒットし、ここで勝負が決まった。

勝った小橋は「準決勝で終わったかと思ったのですが、末永さんには悪いですがラッキーでした。決勝で横井さんにぶつけられましたがマシンに問題はなさそうです。優勝した実感は……まだわかないですね」と混乱のレースを困惑した表情で語った。いっぽうの末永は「今夜は小橋先輩と呼ばせていただきます。リム落ちはルールなので仕方ないですね。今晩は祝杯と反省会になりそうです」と悔しさを滲ませていた。

夕方から行われたD1夏祭りで小橋は末永と川畑と共に初優勝を乾杯。1杯飲んで作業に戻ろうとする小橋に対し、末永と川畑は「俺の酒が飲めないのか」と一言。センパイからの優勝の乾杯は長時間にわたって行われていた……。

最終戦「TOKYO DRIFT」進出への戦いとなった日曜日の第7戦

一夜開けての日曜日。午前中に単走決勝が開催された。朝のうちは雨が落ちていたこの日のエビスサーキット。

まず最初に高得点を叩き出したのはエビスを得意とする村山。98.34でトップに立つ。
そして真打ちといえる松井が松井が最高速度119.1km/hでジャンプ!

その速さゆえに2セクターから3セクターまでドリフトが繋がり、100.22という満点超えを叩き出した。

これで勝負ありに見えたのだが、またしても川畑が最高速度121.2km/hからの高速ジャンプドリフトから、2セクターと3セクターと強引につなげるダイナミックなドリフトを披露。4セクターを切り捨てても、前半で点数を稼ぐという作戦が功を奏し、単走今期6連勝を達成し、シリーズ最終戦を残して今シーズンの単走王に輝いた。

勝った川畑「正直言って、自信はありませんでした。エビスを走るのも1年ぶりですし。前日の単走優勝した時は、ちょっとミスがあって気持ち悪かったのですが、今日は思い通りに走ることができました。自分は追い込まれて力を発揮するタイプだと思っていまして、かなり追い込まれていたからこそ、達成することができたと思います」と語った。

いっぽう2日連続で破れた松井「昨日は点数も低かったので抜かれるかと思っていた。でも今日は気合を入れて攻めたし、満点超えだったので獲ったと思っていました。だからすごく悔しい。」と唇を噛み締めていた。

横井が今期3勝目を挙げてチャンピオンシップに王手

午後から行われたベスト16戦から激しいバトルが繰り広げられた。小橋VS藤野。

両者共に超高速ドリフト。先行して逃げる藤野に対して小橋が常に同じ角度で付いていき、1.5ランクのアドバンテージ。

小橋先行の2本目、藤野がピタリとつけていき、1.5の差を巻き返す。通常だとイーブンの場合、ベスト16戦はランク判定で藤野の勝利となるのだが、合計ランクが34ポイントを超えていた為に再戦。2本目、後追いの藤野が小橋を捉えて1ランク獲得し、藤野が勝ち進む。

横井VS末永(直)。横井が先行の1本目、末永は1セクターの前で車を止めてしまう。横井はそのまま走り続ける。末永からスタートしてから最初の右のコーナーのタイミングが合わなかったからやり直しのアピールがあったが、スタート直後ではなく距離からの立ち上がりだったので審判団から棄却。これで末永はチャンピオンシップ争いから脱落した。

北岡VS高橋の若手対決も激しいものとなった。北岡は前日、マシンが大幅に壊れる暴れっぷりをみせたが、一晩で見事に修理。普段から共に練習をしているという2人は、互いを信じた熱いバトルを見せる。

そして北岡が後追いの2本目。ジャンプドリフトからビッタリつける状態。高橋も逃げを図るが、差を広げることができず北岡が勝利した。

この熱いバトルはベスト8の他の選手にも飛び火。田中VS川畑は、先行する川畑に対して後追いの田中が最初からビタビタに付けてアドバンテージを取る。川畑にもスイッチが入ったようで、後追いで応酬。勝負がつかず再戦に。再戦の川畑先行の時、田中がジャンプ直後に川畑の側面に追突。フロントバンパーが大きく破損したいっぽう、いっぽう川畑は足廻りを再調整して事なきを得た。すでに4ランクのアドバンテージがあった川畑は普通に走行するだけで勝ち上がった。

また、松井VS末永(正)では、松井先行に対して末永が1セクターに入る前から接近しすぎて松井をプッシュ。松井のサイドステップが外れてしまう。これが松井に対する走路妨害となり末永にマイナス3ランク。2本目は松井が危なげなく走りきり準決勝にコマを進めた。

準決勝は川畑VS藤野というTOYOタイヤ同士の戦い。川畑が先行の1本目、もの凄いスピードで藤野を引き離しにかかるが、その際にインカットを2回行いペナルティ。これが最後まで影響し、藤野が久々となる決勝戦に進出する。

もう一組、横井VS松井は横井が先行の2本目で松井を振り切り勝負有り。ファイナルへと進出する。

3位決定戦、そして決勝を前にして突然の天気雨。路面は氷上のように滑るダンプコンディション。ウェット係数2が提示された。
3位決定戦は松井VS川畑。エビス単走巧者同士の対決だ。ここで後追いの松井が川畑に吸い寄せられるように差を詰めて1ランクのアドバンテージ。

2本目、川畑がジャンプドリフトで姿勢を乱して失敗。これにより松井の3位が決定し、RE雨宮の雨宮勇美代表も大喜びだ。

決勝戦は藤野有利も…

決勝はウェット係数3の中で行われた。藤野と横井は過去4回、それぞれ2勝づつのイーブン。サージタンクが破損し手負いの横井。

ここで後追いの横井が滑る縁石に後輪を載せてスピン。藤野の好走もあり3ランクのアドバンテージ。ここで一気に有利になった藤野は、後追いできっちり自分のドリフトをして優勝かに見えた。しかし、2本目の走行後に後輪タイヤのビートが外れリム落ちしていたことが発覚。これが失格の裁定となり、横井の優勝が決まるというD1史上例のない結果となった。

優勝との話を聞いて横井は驚きを隠せない様子で「僕も筑波でビート落ちの経験があるので、それだけ攻めているということだと思います。審査席前まではもらった!勝ちが見えたと思ったところでゼブラを踏んで(スピンをして)負けてしまったので、あとは気持ちよく走ろうと思いました。ありがとうございます」と困惑した表情。いっぽう藤野は「お疲れ様でした。結果、こういう事になって残念ですけれど、しょうがないです」と淡々とした表情で語った。

これにより、横井はチャンピオンシップ争いで一気に有利な立場となる144ポイント。2位の川畑は123ポイントと21ポイント差で追いかけるが、次戦で優勝しない限りはチャンピオンを獲得できない状態と言える。

次戦は11月3日(土)、お台場特設会場で行われる。